室生犀星『随筆集 文藝林泉』(昭和9年)
ちょっと変わった本のタイトルですね。
本人も序に最初は『一人静』にするつもりだったと告白しています。
林泉はつまりは庭のことで、庭のことについて書いたもの、
それを切り口にした旅やそぞろ歩きを書き留めた随筆が多めに入っていますが
じっさいは随筆・書評・人物評・短歌・発句・日記……と多方面にわたっています。
文芸全体を庭とみて、そこに据えられた石や、植えられた木、置かれた石造品など
を各ジャンルにあてたと考えてみればよいのでしょうか。
『庭を造る人』を書いていますし、じっさい、犀星の庭狂いはそうとうのもの。
まだ入手したばかりなので、全部は眼を通していませんが
最初に「京洛日記」が置かれ、京都での庭巡り、京都人との交友が
綴られていて、これを読んでいると、よいお菓子で一服いただいている気分です。
例によって著者自装ですが、安いのを選んだのでけっこう傷んでいます。
しかし、まだ紙質もよいし、印刷も天下の中央公論らしくきれいです。
書店のレッテルがやはり2枚貼ってあり、一つは「京都三條そろばんや書店」
もう1枚は「DAIMARU KYOTO」大丸京都店ですね。
先日の『花霙』のそろばんやは本が描いてありましたが、今回は算盤が描かれます。
そんなわけで小生のこのところのマイブームは昭和戦前期の文芸になっています。