畳の上の山登り
本棚から三田博雄『山の思想史』岩波新書青版 1973年 を出してきました。
北村透谷・志賀重昂・木暮理太郎・武田久吉・田部重治・大島亮吉・加藤文太郎、
高村光太郎、そして今西錦司と近代以降の登山家、山の思想家が批評されています。
小生はこの本を学生時代に買って、たぶん加藤文太郎と今西錦司の所だけよんで
他は読まなかったのだと思い返しました。もちろん肝心の冒頭章「なぜ山に登る」は
敬遠したのでしょう。ゲーテを素材にしてヨーロッパ近代科学の成立と登山の深い関わり
を語り、それを踏まえて、近代の日本の知識人の新たな自然観の獲得の過程を上掲の人々の
作品や山行そのものを通して説き明かしていきます。
いかにして山は「再発見」されたか。登山とエコロジー、登山というまぎれもない体験
が、自然観や人間そのものをどう変えていくのか、色々と教えられるところがあります。
本書はもともと山の雑誌『岳人』に連載されていたものをまとめたようです。
岳人はモンベル傘下に入ってわずかにその命脈をつないでいますが、昔からもう一方の
『山と渓谷』より硬派なイメージがありましたね。
山の本というと高頭式の『日本山嶽志』を思い出します。かつての職場に二冊あって、いたみの
激しかった方を廃棄してくれないかなぁとひそかに期待してましたが、在職中はついに廃棄
されませんでした。
時々書庫に入って挿絵なんかを見て楽しんでいましたが、今買うと一万円くらいするようです。
そんなこんなで、このところくたびれたら、寝転んで山の本をめくっております。
*湖北横山岳 1993年